遺伝子検査の保険加入への影響は?告知義務は無い。

保険と遺伝子検査

遺伝子検査の技術が向上したので、最近では自宅にいながらインターネットを通して遺伝子検査キットを注文し、検査できるようになりました。クリニックなどでも自費になることがほとんどですが希望をすれば、遺伝子検査を受けることができます。

しかし、保険加入の時に遺伝子検査の結果を告知する必要はあるのかどうか気になる人も多いのではないでしょうか。今回は遺伝子検査に対する日本や海外の保険会社による対応の仕方などを比較しながら、わかりやすくまとめます。

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発症する可能性の高い単一遺伝子病か食習慣などが影響する多因子性疾患か

遺伝子検査とひとことでいっても、単一遺伝子病と多因子性疾患では検査結果の意味あいが異なります

例えばハンチントン舞踏病のような単一遺伝子病の場合には、遺伝子検査で異常が見つかった場合には高い確率で発症します。

高血圧や糖尿病、心疾患などのような多因子性疾患の場合には、遺伝子検査で発症のリスク、つまり発症しやすい体質かどうかがわかります。例えば糖尿病のような多因子性疾患は、遺伝子検査で発症リスクが高いということがわかっても、バランスの良い食事や運動を心がければ発症しないこともあります。

単一遺伝子病は日本国内では比較的稀な病気となっています。しかし、発症の可能性が高いため、保険会社よりも国が補助をする必要があると考えられており、難病として認められ医療費助成を受けられることが多いです。

一方で、近年クリニックで行われている遺伝子検査やインターネットなどで購入できる遺伝子検査キットによる検査では、主に多因子性疾患の発症リスクを調べます。多因子性疾患の場合には、遺伝だけでなく食事や生活習慣などの環境因子が大きく影響するため、基本的に国は医療費助成を行いません。

遺伝子検査結果を保険会社に告知する場合としない場合の問題点

保険会社の動向

2016年4月に保険会社大手である明治安田生命が、遺伝子検査の情報を保険加入時に利用したサービスを検討すると発表がありました。日本の保険会社では初めてのことです。ただ慎重に検討するようなので、実際に実施されるのはまだ先になるでしょう。

そのため現時点では、日本の保険会社に遺伝子検査結果を受けたことがあるか、遺伝子検査の結果はどうであったかを問われることはありません。今まで遺伝子検査情報が求められなかったのは、遺伝子検査が費用や認知度などにおいて一般的といわれるレベルの検査ではないこと、あくまでリスクや体質がわかるだけで病気が確実に発症するか不確定であることなどが理由として挙げられます。

しかし今回の明治安田生命の発表を皮切りに、他社も今後、多因子性疾患を発症するリスクが高い人に対して告知を求め、その内容によって保険に加入できるか判断したり、保険料を高く設定するなどの試みがされようとするかもしれません。

では、遺伝子検査の結果を保険会社に告知するかしないかでどのような問題が起きるのでしょうか。保険に加入する被保険者だけでなく保険会社のことも配慮しなければいけません。

被保険者(保険に加入する立場)の視点

まず、被保険者側から見ると遺伝子検査結果によって、まだ発症していないにも関わらず、発症のリスクが他の方に比べて高いという理由で保険加入を断られたりする可能性が考えられます。

これは遺伝子差別ともいわれ、遺伝子検査結果を保険会社に提示するべきか否かという問題に対する議論の中心となります。そして遺伝子差別を避けるために、多くの国では保険会社が遺伝子検査結果を求めてはいけないような法律があります。

保険会社の視点

しかし、保険会社側から見ると、遺伝子検査結果を求められないことによって保険の仕組みが成立しなくなる可能性があります。

つまり、多因子性疾患の発症リスクの高い人が、遺伝子検査結果を考慮して将来のために通院時や入院時に高い保険料が支払われる保険に告知せずに入ることによって、保険会社が支払う保険料の合計額が高くなります。

リスクの低い人が、高い人の保険料までカバーしなくてはいけない状態になり、徐々に保険料も高くなります。するとリスクの高い人ばかりが保険に加入しようとしてしまい、保険自体が成立しなくなる恐れがあります。そのため、国によっては高額な保険料が支払われる保険に加入する際には、特例として保険会社に遺伝子検査結果を要求することを認めていることもあります。

告知義務違反にはあたらない

遺伝子検査結果を保険会社に言わないのは告知義務違反か? 保険に加入する際に、保険会社に遺伝子検査結果内容に関して問われないのであればあえて言う必要はありません。また、加入時に特に聞かれていない場合に、後から遺伝子検査をしていたことが発覚しても告知義務違反にはなりません

また、日本ではまだ明確に取り決められていませんが、各国では基本的に遺伝子検査の実施の有無や、検査結果に関して保険会社が問うのは問題と考えられています。

日本と海外における遺伝子情報に対する法律の違い

日本と海外諸国の遺伝子検査に対する対策の違いを考える時には、そもそもの保険制度の違いも理解する必要があります。

日本では国民皆保険制度により、国民は国に保険料を納める代わりに、病院を受診した時には基本的に医療費の3割を支払います。病気や手術、万が一死亡した時に心配な方は、任意で保険会社の提供する医療保険や生命保険などに加入します。つまり日本の場合には、遺伝子検査の結果を告知するか否かは、任意の保険に入ることを考える時に発生します。

しかし、アメリカの場合には国ではなく、各保険会社が提供する保険を購入するという形になっており、受診時に払う医療費は自分の加入している保険会社によって異なります。月々の保険料が高ければ高いほど、受診した時に払う医療費は安くなります。そしてカバーされる検査や手術、入院も多くなります。しかし、月々の保険料が安い保険を選択していると、受診した時には保険でいくらかカバーされるものの高額な医療費を払わなくてはいけないこともあります。

アメリカでは近年まで収入が低いと保険に入れず、医療も受けられない人が多く存在している状態でした。また、病院に救急搬送されて助かったとしても、病院に請求された医療費を払えず、自己破産する人も多いそうです。2010年に通称オバマケアとよばれる皆保険制度が定められた後も、各保険会社に依存している状態は変わらず、無保険者の割合は減っているもののまだアメリカの医療保障には問題があると考えられます。

つまり、アメリカでは日本のような国の保険に入るような感覚で、各保険会社が提供する保険に入らなくてはいけません。また、保険料は今までの病気や年齢などによって決まります。保険会社としては、国と違って利益を追求したいという気持ちがはたらくため、できる限りリスクの高い人は入れないか、毎月の保険料を高く設定したいと考えるのは自然です。

遺伝子検査結果を保険会社が求められる状況だと遺伝子差別を生む可能性があると考え、アメリカでは2008年に遺伝子情報差別禁止法(The Genetic Information Nondiscrimination Act;GINA)とよばれる法律が制定され、基本的に保険会社は遺伝子検査結果を被保険者に対し聞いてはいけないことになっています。しかし、生命保険や長期医療保険、身体障害保健などの保険には制限がされていないので今後問題が起きる可能性が懸念されています。

ドイツは日本と同様に国民皆保険となっています。また日本と同じように、個人が任意で個別の医療保険に加入することもできます。ドイツでも遺伝子検査結果の告知に対する問題への議論がされていましたが、遺伝子診断法という法律によって基本的に保険会社は遺伝子検査の結果を聞いてはいけないことになっています。しかし、高額な保険への加入を希望する場合には特例として保険会社が遺伝子検査の結果を求めることができます。これはリスクが高いとわかっている人が、あえて高い医療費が支払われる保険に加入しようとすることを防ぐためです。

日本ではまだ遺伝情報の扱いに関する法律がないどころか、議論もされていない状態です。

日本も諸外国の事例を学びながら、早めに法律などを定めるようにした方がよいと考えられます。

将来、遺伝子検査と保険加入の問題について予想されることとは

遺伝子検査の技術は年々向上しているといっても過言ではなく、将来的には目的とする遺伝子だけでなく、その人がもつ遺伝情報を全て解析してあらゆる病気のリスクを想定することが可能になるかもしれません。解析にかかる費用も安くなる可能性が高く、より一般の方に身近になることも予想されます。

また同時に、遺伝子検査の認知度も高まり、検査がより頻繁に行われるようになる可能性も考えられます。

このように遺伝子検査の精度の向上や市場の拡大、認知度の上昇などによって遺伝子検査が健康診断などで行うような血液検査と同じような感覚になった場合に、日本の保険会社が遺伝情報の告知を求めるようになるかもしれません。保険に加入する被保険者にとっても、保険会社にとっても、今後起こりうる遺伝子検査結果の取り扱いに適切に対応できるように、日本でも議論をすることが期待されます。

さいごに

現時点で、遺伝子検査の結果を保険会社に求められることも遺伝子検査の結果で保険会社に入れないことも日本ではありません。

しかし今後は、明治安田生命保険を皮切りに、次々に日本の保険会社が遺伝子検査の情報の告知を求めるようになるかもしれません。

遺伝子検査がより身近で安価になり、遺伝子検査結果により将来の病気を予想できる確率がより高まった場合には、保険会社が遺伝子検査結果を利用したサービスを提供しようとするのは自然の流れと考えられます。しかし法律などによる規制がないと、遺伝子差別が起きる危険もあります。

被保険者のためにも、保険会社のためにも、来るべき将来に備えて、諸外国の事例を参考にしながら遺伝情報の取り扱いについて議論されることが望まれます。

個人遺伝情報取扱協議会が遺伝子検査サービスの認定制度「CPIGI認定」を開始

2016.06.01

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